塩竈神楽保存会

神を祀るために鹽竈神社で奉納されるほか、御釜神社や祓ヶ崎(はらいがさき)稲荷神社の例祭、市内外のイベントなどで披露されることの多い塩竈の伝統芸能、「塩竈神楽」。その文化を後世に伝える「塩竈神楽保存会」が、充実した活動を続けている。

神を祀り、人々の安泰を願う

塩竈神楽保存会神楽は、神様を迎えて音楽や踊りを捧げることで人々の延命長寿を願い、悪霊を祓い、五穀の豊穣を願う営みだ。鹽竈神社では古く1360年に神様に馬を奉納した(神馬献上)ときに神楽が演じられた記録が残る。

現在の塩竈神楽の型は明治時代から大正時代にかけて確立されたもので、伊勢流の「太神楽」と出雲流の「十二座神楽」を融合させた珍しいスタイル。舞台の四方を清めて天下泰平を願う「祈祷の舞」、五穀豊穣・商売繁盛・豊漁を願う「所作の舞」の二つの基本型に、悪魔払い・火伏せ・息災延命を祈る「獅子舞」を加えた3種類の舞で構成される。2010年、この「塩竈神楽」は塩竈市の無形民俗文化財に指定された。

若手育成のしくみを築いた「保存会」

塩竈神楽保存会「塩竈神楽保存会」はこの民俗芸能を後世に伝えるために昭和初期に結成された。現在は鹽竈神社の行事の際に同社の舞殿で神楽を奉納するほか、御釜神社や祓ヶ先稲荷神社の例祭、市内外のイベントなどでも演舞を披露しつつ、技能の研鑽、後進の育成に務める。

現在、「保存会」の構成員は10代から80代まで31名。20代、30代の部員が多いのが特徴だ。「保存会」会長の鈴木朝博さんは、「後継者不足に悩む他地域の神楽団体の人に羨ましがられるんです」と話す。

この磐石ともいえる状況を作り出しているのが、市内小中学校で同会が続けている教育活動だ。塩竈市立第三小学校の「郷土芸能クラブ」、第三中学校の「郷土芸能部」では、「保存会」の指導のもと、多くの生徒が本格的に「塩竈神楽」を学んできた。そしてそういった活動の経験者が、今の「保存会」の活動の中心となっているのだ。

活動の幅を広げ、文化を発信していきたい

塩竈神楽保存会小中学校での指導のほかにも、市主催の塩竈学まちづくり学習事業「しおがま“何でも”体感団」親子行事など、「保存会」はさまざまな場面において積極的に「塩竈神楽」の実演、普及活動に努めている。

鈴木さんは「保存会」の今後の活動についてこう話す。

「今までにやっていなかった演目に挑戦したり、他の地域で神楽を披露する機会を増やしたりして、日本の文化をもっと表現していきたい。そのためにも、若い世代への指導をしっかり続けながら、我々の芸を磨き続けていかなければなりませんね」<

※本記事における神楽、および塩竈神楽に関する情報は、塩竈神楽保存会パンフレット、ウェブサイト「文化の港 シオーモ」などを参考にしています。

text:加藤貴伸 photo:大江玲司 取材日:2018年12月1日

プロフィール

塩竈神楽保存会
  • 塩竈神楽保存会
  • 発 足:昭和初期
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