
塩竈市在住の着付け講師・岡澤マキ子さんは、塩竈市公民館の一室で開講する着付け教室「岡澤きもの学院」で指導にあたる一方、塩釜市芸術文化協会会長を2021年から務めるなど地域の文化の発展・継承にも尽力する。岡澤さんに、活動への思いを聞いた。
着物の文化をなくしたくない
「襟がズレていたら駄目」「腰から上の背中心(背中の縫い目)をまっすぐに」
和やかな雰囲気の中、時折ピシャリと厳しい声が飛ぶ。公民館内の和室で週に1回開講される着付け教室「岡澤きもの学院」の受講生は、過去に公民館の事業「着物着付・礼法講座」(1年間の講座)で岡澤さんの着付け指導を受け、その後も続けたいと集まったメンバーだ。
「10年以上続けている人も多いです。みんな着物が好きだから、楽しんで続けているのだと思います」と岡澤さんは話す。
岡澤さんは30年以上にわたって務めた「着物着付・礼法講座」の講師を2022年度末で辞したが、「岡澤きもの学院」での指導は2023年度も続けている。
「着物の文化をなくしたくない一念ですね」と話す岡澤さん。
「塩竈は着物が似合う。日常的に着物を着て歩く人がたくさんいるようなまちになったらうれしいです」
着物のある暮らしを母から受け継いだ
岡澤さんは岩手県大船渡市の出身。子供の頃から、折に触れ、母親が仕立てた着物を身に着けた。
「お正月なんかに着物を着せてもらうのが嬉しかったのを今も覚えています。着物は1枚の布だから、ほどいて仕立て直して、何代も受け継ぐことができる。私が着物の道に進んだのは、母が着物を残してくれたから、というのが大きいと思います」
かつては母親のサポートのもとで着物を着ていたが、30代の頃から着付け教室に通うようになり、次第に学びを深めて指導者となり、縁あって塩竈市公民館の講座を担当するようになった。
「着物を着るなら、崩さずにきちっと着てほしいと思って指導しています。居ずまいを正すことで、心構えもしゃんとする。着物にはそういう力があると思っています」
地域の文化の発展を願う
岡澤さんが関わる文化活動は着物・着付けにとどまらない。2015年には仲間とともに「塩竈芸妓 千賀乃屋」を結成し、専門家に踊りの指導を請うなどして芸妓の育成に力を入れてきた。
「塩竈にはかつて芸妓さんがたくさんいて一つの文化をつくった。私たちの『塩竈芸妓』の活動が、末永く塩竈の文化として定着してほしいと思っています」
「千賀乃屋」の芸妓は岡澤さんを含め15人ほどとなり、そのほかに舞妓として稽古を続ける子どもたちもいる。
さらに岡澤さんは2021年から塩釜市芸術文化協会会長を務め、地域の文化活動の発展に尽力している。
「着物だけではなく、お茶、お花、民謡、踊りなど、各分野の活動が盛んになって、塩竈の芸術文化がより豊かなものになったらいいですね」
text:加藤貴伸 取材日:2023年4月3日
プロフィール
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- 岡澤マキ子
- 「岡澤きもの学院」着付け講師
- 1939年岩手県大船渡市生まれ。1979年から塩竈市在住。
- 1992年度から2022年度まで塩竈市公民館の公民館教室「着物着付・礼法講座」講師。
- 2023年4月現在、「岡澤きもの学院」のほか、公民館「勤労者カレッジ」「男性のための着物着付教室」などで指導。「塩竈芸妓 千賀乃屋」女将。塩釜市芸術文化協会会長。