おさんこ茶屋

創業230年という歴史を持つ「おさんこ茶屋」。とりわけ有名なのが、あん・ごま・くるみ・醤油・づんだの「五色だんご」である。彩りのよい五色だんごは、地元のみならず観光客にも愛される老舗の味だ。その味を守り続け、茶屋を切り盛りする鈴木さんご夫妻にお話を伺った。

初代は腕が良いと評判の宮大工。奥さんが副業で始めた茶屋が大当たり。

おさんこ茶屋現在のご主人、鈴木雄三さんで実に11代目を数える歴史あるお店「おさんこ茶屋」。しかし、意外にも創業当時は今のような商売ではなかったそうだ。鈴木雄三さん(ご主人)「初代と言われるのは、宮大工の棟梁だった鈴木喜惣右衛門という人で、神社やお寺などを手がけたそうです」鈴木志津子さん(奥様)「それと、赤坂の交差点のところに古い鬼瓦がのった越後屋さんの建物があったんですが、そこもうちの先祖が建てたものでした」

ご主人「大工さんのほうは、300年以上も前くらいから続いている、っていうお話ですが、お寺の過去帳が焼失しちゃったから詳しいことはわからないんですよね。」
奥様「過去にまつわる書物もなにも残ってないので、なんとも言えないし、言い伝えしか残っていないの。残念ながら。(笑)ただね、茶店は230年くらいで、塩竈の飲食店では一番古いそうですよ。

大工の妻女が、片手間にやっていたのがお茶屋だった。茶屋といっても団子などを出す店ではなく、“座敷茶屋”という宴会用の座敷などがあって、料理と酒、そして芸者をあげたりする店だったらしい。
ご主人「ここから四軒先に松葉屋さんという芸者の置屋さんがあって、うちが揚屋さんだった、と言われています。京都祇園のお茶屋さんと同じような感じだったんでしょうね」
奥様「そう、ここ(本店)と鹽竈神社にも店がありました。鹽竈神社へ参拝しに来るお客さんがだんごがおいしいと、お客さんもいっぱいいたんでしょうね」

やはり、昔の塩竈は、肩がぶつかるくらい人でごった返していた、と言われていたそうである。港の勢いもあり、さらに、鹽竈神社への参拝客でも賑わった。その多くのお客さんから、“だんごがおいしい”と言われて今のスタイルになったのだろう。

東北の素朴で美味しい味覚を詰め込んだだんご。

おさんこ茶屋普通、おだんごはあんこ・ごま・しょうゆという3色が一般的だ。づんだとくるみをプラスした五色だんごはちょっと珍しいかもしれない。ご主人「五色になったのは、明治時代からで、なぜそうなったかは定かではありません。でも、づんだを出したのはうちが一番古いと言われているんですよ。づんだは宮城県から岩手県南部まで広がる郷土料理、その範囲から見ても伊達政宗が開発したという説は当っているのではないかと思います。またくるみもまた東北の名産ですしね。うちでは福島県会津の“鬼ぐるみ”というものを使っています」

奥様「もしかしたら、東北でとれやすい食材を使っているからかもしれません。ごまも、東北の有名メーカーのものを使っています。色が真っ黒でね、おいしいですよ。父親の代の頃は、ごまを自分の家で石臼をひいて煎ってやっていたんですよ。」ご主人「だんごの仕込みは、くるみとごま、しょうゆは毎朝。うちのだんごのお米はかまどで炊きあげています。朝の3時にお父さんがかまどに火を入れる。僕たちが起きてくるのをお米が待っていてくれているんです(笑)」

五色だんごをきっかけに、塩竈のいいところをたくさん知ってほしい。

おさんこ茶屋最後に、お二人に塩竈を訪れる観光客の皆さんへのメッセージをいただいた。
ご主人「門前町のお店が協力して始めたおもてなし会で、お客さんに各店の魅力の案内や通り沿いにある御釜神社の由来や七不思議などをお教えしています。

奥様「さらに、塩竈にはお客さんを集める魅力的な素材がいっぱいありますよ。鹽竈神社だけでなく、烟波亭もそうですし、奥の細道、藤原智明の別邸などなど・・・。この通り(御釜神社のある通り)だけでも、こんなにいっぱいあるんだよ、っていうことも観光客のみなさんにお教えしたいですね。

おさんこ茶屋

  • おさんこ茶屋
    おさんこ茶屋外観
  • おさんこ茶屋
    おさんこ茶屋店内
  • おさんこ茶屋
    竈(かまど)も現役
  • おさんこ茶屋
    じっくりと丁寧にこしらえてます
  • おさんこ茶屋
    東北の食材にこだわってます
  • おさんこ茶屋
    旅のお供に5色だんごを…

SHOP INFO.

  • 店名:おさんこ茶屋本店
  • 住所:塩竈市本町11-12
  • 電話:022-362-0946
  • 営業時間:9:00-17:00
    (売り切れ次第終了)
  • 定休日:不定休
  • 駐車場:有り(3台)
  • だんご 一皿 580円
  • 箱詰 大1,210円、中910円、小580円
  • づんだもち 一皿

Text:落合次郎 Photo:大江玲司 取材日:2012年1月11日