榮太楼

創業以来、地域にやさしい味を提供し続けて百余年。榮太楼の創業は明治42年。当時は塩竈銘菓『志ほがま』を作っていたという。その後現在榮太楼の代名詞にもなる『なまどら』の元となるどら焼きを始めたそうだ。「2年ほど前に100周年を迎え、鹽竈神社で御祈祷してもらいました。震災前にやれてよかったなと思いますね」と榮太楼の斎藤斤子さんは顔をほころばせた。

塩竈の人々に甘いお菓子で元気付けた

榮太楼そもそも榮太楼という名前の由来を斉藤さんに伺った。「当店の初代が東京・日本橋の榮太楼で修行をしたのですが、何を隠そう初代の名前は“斎藤榮太郎”なんです。それで、お店を独立して持ったんですね。最初は和菓子が主な商品。昔は神社の方、ずっと川だったので、船がそこまで入り込んで来てたんです。

そこで、漁師さんなどが労働後の、甘いもの補給という感じで(笑)。この辺にお菓子屋さんが多いのは、そういう理由もあるんじゃないでしょうかね」

人気の“なまどら”味の発見には試行錯誤

榮太楼のなまどらやっぱり榮太楼といえば、一番のおすすめは「なまどら」だ。地域の方からはもちろん遠くからも買い求めに来るお客さんもたくさんいる。震災後すぐに、店頭で配られたのもこのなまどら。「冷凍していたストックがあったので、1個100円くらいで配りました。電気もきていなかったので、ちょうど解凍されたぐらいにして(笑)食料が不足していた時期でもあったのでぜんぜん食べてないという人もいた。そんな人に、“じゃぁ、これも持っていってー!”みたいにね。あの時って。“みんなで生きていこう”っていう感じでした。だから改めて“食べ物っていいな、食べ物屋さんっていいなぁ、って思いましたね」

さて、人気商品の『なまどら』だが、最近バラエティに富んだ味の『なまどら』が発売されている。「いろんな方からね、いろんな味のものを出してみたら、ってよく言われるのですが、かといって変なのは出せないし、みんなで試行錯誤して考えるんです。最初は“ごま”。そして、季節に合わせて“栗”や“チョコ”。一番新しいのが“ラムレーズン”です。これは、レーズンをラム酒に浸けるのですが、浸ける時間もいろいろ試したりしてけっこう大変な作業でした。これで、180円は、安いと思いますよ。(笑)でもおかげさまで、すごく人気で、遠方からも注文がいっぱいあるんです」和菓子の枠にとらわれない、洋菓子のテイストも取り入れた斬新などら焼きだ。さらに、ただいま試作中なのが『さくら風味』。塩竈ならではの“藻塩”を取り入れたどら焼きになるらしい。

新しい味の追求は、これからも愛される店になるため

榮太楼『なまどら』はここ20年くらいの商品で、定番として愛されればいいという思いで作り始めたとのこと。しかし、ふたを開けてみれば広く人気を集める結果に。「中身に生クリームを入れたのが美味しいのですが、当店では外の皮にこだわりがあるんです。はちみつをたっぷり入れて焼き上げるのですが、焦げやすいのでその加減が難しいんです。いろんなものを入れていくと、それだけ大変だったり、いろいろ試行錯誤ですよ。でも種類が増えると、期間限定やお店限定などもあるので、ぜひお店に足を運んで、気に入った味を見つけてほしいと思います」

そのほか、ウメのゼリーでほんのりお酒の香りがする「松島のつゆ」や鹽竈神社に納めている「塩釜櫻」、チーズブッセの「ふわら」などなまどら以外にも絶品の味が揃っている。「明治時代から続く老舗ですが、時代に合わせていくことも大事。今回、震災もあって、続けることの大切さを改めて感じました。いろんなことを軽んじないでやっていきたいと思ってます」

榮太楼

  • 榮太楼
    榮太楼外観
  • 榮太楼
    榮太楼店内
  • 榮太楼
    定番のなまどらが人気
  • 榮太楼
    塩釜櫻
  • 榮太楼
    ふわら
  • 榮太楼
    松島のつゆ

SHOP INFO.

  • 店名:菓匠 榮太楼
  • 住所:塩竈市本町4-5
  • Tel:022-362-0235
  • 営業時間:9:00~19:00
  • 定休日:無休
  • URL:サイトはコチラ
  • 販売店:
    ヨークベニマル塩釜店/みやぎ生協塩釜杉の入店/ザ・ビッグ塩釜店

Text:落合次郎 Photo:大江玲司 取材日:2012年2月16日