今野元博

店舗数が全盛期の4分の1以下に減少するなど先行きの不透明感が高まる塩釜水産物仲卸市場で、2020年以降、状況の打開に向けた改革が進められている。その動きの中心となっているのが若手商店主など有志の集まり「塩釜仲卸市場ブリッジプロジェクト」だ。プロジェクトを牽引する今野元博さんに話を聞いた。

店が減れば市場の魅力が薄れる

今野元博1965年の設立当時、塩釜水産物仲卸市場には367の店舗が軒を連ねた。飲食店の仕入先として、あるいは市民の台所として大いに賑わった仲卸市場だが、その後バブル崩壊やリーマンショックの影響、店主の高齢化、東日本大震災の影響などで閉店が相次ぎ、2020年には93店舗まで減少した。今野さんは言う。

「市場の醍醐味は、お店の人とのコミュニケーションを通して商品の価値を感じながら買い物を楽しめるところにある。店舗がどんどん減れば、そんな市場の魅力が薄れてしまいます」

仲間と語り合い、改革を目指した

今野元博今野さんは仲卸市場内でエビを中心に扱う株式会社海老今の3代目。音楽業界や商業施設での勤務を経験した後、2017年9月に家業である海老今に入社し、2019年、先代の父から会社を継いだ

海老今で働き始めて1年ほどの間に仲卸市場が抱える問題を痛感したという今野さん。とりわけ、場内の事業者が4つの協同組合に分かれて所属する体制の変革が急務だと感じた。

市場全体の運営を効率化して経費を節減するためにも、また市場全体に関わる協議をスムーズに進めるためにも、組合の統合は不可欠でした

今野さんは他の商店主など問題意識を共有する仲間との語り合いを経て2020年5月に「塩釜仲卸市場ブリッジプロジェクト」を立ち上げ、本格的な改革に乗り出した。

地元の人がワクワクできる市場に

今野元博ブリッジプロジェクトが旗振り役となったことで、仲卸市場関係者の長年の懸案だった組織再編が動き出し、2022年6月、4組合の合併が実現した。また今野さんらは空き区画となっていた7号売場を2021年にリニューアルして「ザ・セブンストリート」と名付け、青果店や雑貨店など海産物以外の店舗を誘致した。さらに、夏休みの「こどもチャレンジラボ」など子どもも楽しめるイベントを開催し、家族連れなどの新規集客も図った。

「この場所で仲卸市場が存続するには、地元の人に通ってもらえる場所になることが重要です。そのためにも、多くの人に市場の魅力を伝えたい。イベントや新エリアは、来た人が『ワクワクできる楽しい市場』だと感じるきっかけになるはずです」

2022年には「ザ・セブンストリート」を改装して人気ラーメン店などを誘致した。2023年秋には「ザ・セブンストリート」に隣接するエリアの大幅なリニューアルも予定する。平日・土日を問わず大勢の人が訪れて思い思いに買い物や食事を楽しむ賑やかな市場を目指し、今野さんは仲間とともに新たな戦略を練り、実践し続けている。

text & photo:加藤貴伸 取材日:2023年7月4日

プロフィール

今野元博
  • 今野 元博(こんの もとひろ)
  • 株式会社海老今 代表取締役社長
    1979年塩竈市生まれ。
    音楽業界、商業施設、海老今での勤務を経て、2019年より現職。
    2023年7月現在、多賀城市在住。協同組合塩釜水産物仲卸市場の副理事長、塩釜仲卸市場ブリッジプロジェクトの代表を務める。