レストラン シェ・ヌー赤間善太

オーナーシェフであり父でもある赤間善久さんと共に、塩竈の洋食の味を守り続ける赤間善太さん。幼い頃から慣れ親しんできたフレンチではあったが、もっと視野を広げたいという気持ちから、本場フランスへ単身、武者修行に。そこで見えてきた、自分なりのフレンチ、そして改めて気づいた塩竈の魅力を語っていただきました。

自分の料理人としての幅を、もっと広げたい。

高校(塩釜高校)を卒業して、宮城調理師専門学校に通い、調理師免許を習得した赤間善太さん。その後、父親の店であるシェ・ヌーに入社。3年間オーナーシェフでもある父親の下で働いていました。「どうしても目の前の仕事に終われ、自分のキャパシティを広げることができない。そこで、本場のフレンチの世界へ飛び込もうと、フランスへ渡りました

フランスに渡ったのは22歳の時。最初は留学生として、語学学校へ通いながら夜はレストランで働くというスタイルだったそうです。「まずは、父親の昔からの友人がやっていたパリのレストランで働き、その後一時帰国を経て、ワーキングホリデーを利用し、今度はフランスでも山間部にあるアルザス地方のレストランで1年間働いてきました」

言葉、考え方、気質。

シェ・ヌーフランスに行ってまず感じたことは、言葉の壁だったそう。「最初は何を言っているのか全くわからなかったし、こっちもどうアピールしていいのかもわかりませんでした。もちろん言葉が違うことも関係しているのでしょうが、考え方も日本人とはまったく違うんですよね。ラテン系のような楽天的な部分もあり、かと思えば、非常にストイックな部分もあったりして。それを向こうの人は上手に切り替えるんですよね」

ヨーロッパ人特有の“遊ぶ時は思いっきり遊んで、仕事するときはきっちり仕事する”という気質にとても興味を覚えたそうです。「日本人はどちらかというと、もう仕事ばっかりになる傾向がありますよね。でも向こうの人はオンとオフ、集中力の入れ方がうまく、短期間で仕事をこなしています。そこは見習うべきところなのだなと思いました」

食材の違いこそあれ、地元の味を大切にしている気持ちはいっしょ。

アルザスもパリも内陸、海のある塩竈とは環境が全然違ったと赤間さんはいいます。「アルザスのレストランの裏は、一面のブドウ畑。フランスでも田舎というイメージのある土地でした。塩竈とは全然違う環境で暮らしてみて、海の青が、緑に変わったという感じ。でもこういう生活もおもしろいな、と感じたりはしました。一応レストランだから魚料理もあるのですが、塩竈の魚の質と比べると、やっぱり落ちますね(笑)。魚の仕入れの仕方も違いますし。うち(シェ・ヌー)なら1本まるまる仕入れていますが、フランスでは、すでに下ろされた状態で来ていましたからね」

それで、塩竈など海沿いの地域のお店が、どれだけ品質がいいものを出しているのかということがよくわかったと赤間さん。「塩竈の魚がこんなに品質がいいものだったとは、当たり前になっていたので、気づかなかったんでしょうね」。

伝統の味を受け継ぐことに加え、自分なりのフレンチにも挑戦していきたい。

シェ・ヌーフランスでの修行を終え、塩竈に戻ってきたのが2009年、25歳の時だった。「戻ってきて、渡仏前と明らかに違うのは、仕事に対するモチベーションですね。料理に対する姿勢が変わりました。向こうの誠実さというか真面目さというか、そういう気持ちで料理に接することができるようになりました」

シェヌーがオープンしたのが1980年。今年で31年目を迎えた。父親が作った店をゆくゆくは自分が継ぐことになります。「とりあえず継ぐにしても、急に変わりましたとなってもなかなか受け入れられないと思います。まずは、お客さんからの信頼を得ることから始めなければならないでしょうね。だから、今の状態をキープしつつ、だんだんと自分なりの料理を出していければいいなと考えています。もちろん、ここの料理が好きで来てくれるお客様が大半だから、残すべきものはきちんと残す。その上で、自分で作り出すものも取り入れながらやっていきたいですね」。

渡仏以前よりも膨れ上がった、塩竈という土地への思い。

「やっぱり自分が生まれ育った町ですからね。いい街だなと思いますよ。特にフランスへいってからそう思えるようになりました。また、藻塩づくりとかフォトフェスティバルとか、塩竈を活性化させようとがんばっている人も多いし、だから、僕は食の分野で塩竈を活性化できたらいいなと思っています。塩竈はお寿司屋さんが有名だけど、こういうフランス料理店もあるんだよと、もっともっとアピールしていきたいですね」

text:落合次郎 photo:大江玲司 取材日:2011年12月5日

プロフィール

レストラン シェ・ヌー
  • レストラン シェ・ヌー
  • 住所:宮城県塩釜市海岸通7-2
  • 電話:022-365-9312 / FAX:022-367-7155
  • 営業時間:ランチタイム  11:30-14:00(ラストオーダー)
         ディナータイム 17:30-20:00(ラストオーダー)
  • 定休日:月曜、第3火曜(祝祭日の場合は営業)
  • 料金:ランチ 2,500円
       プリフィックス 3,900円 / 5,700円 / 8,500円
  • レストラン シェ・ヌー http://www.cheznous.co.jp/