髙橋勇弥

2018年8月、ふれあいエスプ塩竈で、塩竈にゆかりのあるアーティストらが出演する「ブルーホールコンサート」が開催された。コンサートの企画・運営を主導したのは、塩竈出身の津軽三味線奏者・髙橋勇弥さんだ。

地元密着型の音楽イベントを企画 

髙橋勇弥髙橋さんは2017年夏、「塩竈を音楽とアートで盛り上げる」を公約に掲げて「しおがま海と笑顔の親善大使」に就任した。そしてその翌年、自身の公約を実現するため、中学時代の同級生であるミュージシャン・あおぞらそらたさんや、髙橋さんと共に親善大使を務める佐藤広恵さん、瀬戸杏香さんらの協力を得て、「ブルーホールコンサート」を開催した。
「『ブルーホール』は、海の中の洞窟のような場所をイメージしています。塩竈の人たちが集まってワイワイ楽しむ日として定着させたいと思いました」と、髙橋さんはコンサートを企画した意図について話す。

8月のコンサート当日、会場となったふれあいエスプ塩竈のホールには100人ほどの観客が詰めかけ、髙橋さんの津軽三味線演奏やあおぞらさんのギター弾き語り、市内の高校生チームによるダンスパフォーマンス、佐藤さんと瀬戸さんのトークなどを楽しんだ。

地元・塩竈での音楽活動を重視

髙橋勇弥髙橋さんが津軽三味線と出会ったのは2004年、中学3年のとき。学校の授業で津軽三味線奏者・二代目小田島徳旺の生演奏に触れてその魅力に引き込まれ、三味線三絃小田島流に入門した。その後は三味線の稽古に没頭して技術を磨き、数々の全国大会で優勝や入賞を重ねる一方、邦楽以外の舞台にも積極的に関わり、三味線を通じたさまざまな音楽表現の可能性に挑戦し続けている。

また地域のイベントや飲食店でのライブなど、塩竈市内で演奏する機会が多いのも髙橋さんの音楽活動の特徴だ。
青い海と空がある港町・塩竈は、音楽が映える場所だと思うんです。でも、音楽があまり聞こえてこないし、一緒に音楽をやる仲間も少ないな、と、ずっと感じてきました」

髙橋さんは、「自分が生まれ育った塩竈を、音楽のあふれる素敵な街にしたい」との思いから、2014年以降はあおぞらさんらと市内のショッピングセンターなどでライブを重ねた。「しおがま海と笑顔の親善大使」に就任してからは塩竈のコミュニティFMでパーソナリティを務めるなど、さらに塩竈に重点を置いた活動を続けている。

「ブルーホール」に託した思い

髙橋勇弥そして前述のように2018年、髙橋さんは「ブルーホールコンサート」を企画し、実現させた。
塩竈で活躍する若者の姿を見て、たくさんの人が楽しんでくれたと思います。それに、音楽活動を通じて得られた仲間と力を合わせて一つの場を作れたということが僕にとって大きかったですね」と、コンサートの手応えを話す髙橋さん。
「このコンサートで急遽共演することになったアーティストどうしが、その後も音楽グループとして演奏活動を続けています。『ブルーホールコンサート』がそういうきっかけになったということがとても嬉しいです」

そして髙橋さんは2019年、「ブルーホールコンサート」を軸に、アートなど音楽以外の要素も盛り込んだイベント「ブルーホールフェスティバル(※)」を開催予定だ。
「365日のうちの1日のイベントとして終わらせるのではなく、この場で出会った人どうしの交流から新たな動きが生まれるような場としてずっと続けていきたい。『ブルーホール』をきっかけに音楽に興味を持つ人が増えて、塩竈の音楽文化の裾野を広げることにつながったらいいですね」

<脚注>
「ブルーホールフェスティバル」については公式ホームページを参照

text:加藤貴伸 photo:加藤貴伸 取材日:2019年6月5日

プロフィール

髙橋勇弥
  • 髙橋勇弥(津軽三味線奏者・師範)
  • 1990年塩竈市生まれ。中学3年のときに三味線三絃小田島流に入門。2016年「津軽三味線日本一決定戦」優勝のほか、全国大会での優勝、入賞歴多数。さまざまな音楽ジャンルとの共演を試み、津軽三味線の新たな可能性を模索している。2017年夏から「しおがま海と笑顔の親善大使」を務める。同年10月から、塩竈のコミュニティFM「BAYWAVE」で「高橋勇弥のどんぴしゃラジオ」パーソナリティ。