ユザーン

2019年5月3日、塩竈市杉村惇美術館の大講堂でインド音楽ライブが開催され、会場はサントゥール(*)、タブラの2種類の楽器の音色で幻想的な空気に包まれた。このライブでタブラを演奏したU-zhaan(ユザーン)さんに話を聞いた。

塩竈での演奏のきっかけは個人的な縁

ユザーンタブラは、太鼓2つで1セットになったインドの打楽器。10本の指や手の平、手首を用いて鳴らす様々な音の組み合わせで、重層的な響きを放つ。U-zhaan(ユザーン)さんは、本場インドでの修行を重ねつつ、日本国内を中心に様々なジャンルのミュージシャンとともに作曲・演奏活動を続けるタブラ奏者だ。

U-zhaanさんが初めて塩竈で演奏したのは今から9年前の2010年。U-zhaanさんにタブラを教わる仙台在住のデザイナー木村麻理さんの声がけで、塩竈市内の飲食店で開催されたライブだった。そして同じく木村さんの主催で塩竈市杉村惇美術館で開催されるインド音楽ライブは、2017年、2018年に続き今回で3回目となった(3回とも、サントゥール奏者・新井孝弘さんとの共演)。

塩竈には、町を象徴するものがいくつもある

ユザーンU-zhaanさんは、2010年以降何度も訪れている塩竈の町についてこう話す。

「鹽竈神社、寿司、地酒。決して大きくはない1つの町に、地域を象徴するものがいくつもあるというのはすごいと思います。それらの文化が1つになって成立しているのが塩竈という町なんですね」

なかでも、鹽竈神社の存在が塩竈の人にとって大きいとU-zhaanさんは感じている。

「僕もお寺の多い町に育ちましたが、特にシンボル的なお寺があるわけではなくて。それに対して塩竈では、人々の暮らしの中に鹽竈神社の存在が息づいている気がします。ちょっとうらやましいですね。僕は今年ネパールのお寺で長い石段を登っていたとき、鹽竈神社の石段を懐かしく思い出しました

2011年の東日本大震災のときに見た、塩竈の被災状況の映像が今も頭に残っているというU-zhaanさん。今は浦戸諸島にも関心を寄せているそう。そんなU-zhaanさんが今後塩竈で展開するパフォーマンスが楽しみだ。

<脚注>
*木の箱の上に張られた金属の弦を叩いてメロディー、ハーモニーを奏でる楽器。西アジア、インドなどで演奏されてきた。

text:加藤貴伸 photo:喜多直人 取材日:2019年5月3日

プロフィール

ユザーン
  • U-zhaan(タブラ奏者)
  • オニンド・チャタルジー、ザキール・フセインの両氏に師事。2000年よりASA-CHANG&巡礼に加入し、『花』『影の無いヒト』など4枚のアルバムを発表。2010年に同ユニットを脱退後、U-zhaan × rei harakamiとして「川越ランデヴー」「ミスターモーニングナイト」等を自らのサイトから配信リリース。2014年には坂本龍一、Cornelius、ハナレグミ等をゲストに迎えたソロ名義のアルバム『Tabla Rock Mountain』をリリースした。2015年、Ryuichi Sakamoto + U-zhaanとして「Tibetan Dance / Asience」を7inchレコードで発表。2016年には映画『マンガをはみ出した男 赤塚不二夫』の音楽をU-zhaan + Shuta Hasunumaで担当し、ボーカルにタモリをフィーチャリングした主題歌が話題となった。最新作は蓮沼執太との共作アルバム『2 Tone』。