鈴木祥太

伝統的な金工技術を用いて金属を加工し、身近な植物を実寸大で再現する金工作家、鈴木祥太さん。2016年春、出身地である塩竈市の美術館で作品を展示する機会のあった鈴木さんに、作品づくりに対する思いを聞いた。

道端のありふれた植物を金属で忠実に再現

鈴木祥太「私が植物に魅かれるのは、その姿に力強さを感じるからです」

子どもの頃から草花を観察するのが好きだったという鈴木祥太さんは、大学時代から磨き続けている金工の技術を用い、身近な植物をリアルに再現した作品を制作している。今回、塩竈市杉村惇美術館の若手アーティスト支援プログラム「Voyage」で、植物の凛とした力強さを感じさせる鈴木さんの作品群が展示された。その多くが、タンポポや野菊などのありふれた植物をモチーフにしている。

「多くの人が普段目にしていて、でも誰も注意を払わないような道端の草花を、私は金属で忠実に再現したいと思っています。植物が本来持っている美しさを感じてもらえたらいいですね」

「硬い」印象を伴いがちな金属という素材を用いながら、植物のしなやかさ、柔らかさが表現されているのが鈴木さんの作品の特徴だ。今回の展示の中では、細い線状に加工した真鍮線を用いて綿毛のふんわり感を表現した「綿毛蒲公英(わたげたんぽぽ)」にその作風がひときわ強く表れている。「展示会で、この作品の前を一度通り過ぎた人が戻ってきてもう一度じっくり見てくれることが多い」と鈴木さんが感じているように、見る者の目を強く引き付ける印象的な作品だ。

作品制作を通してあらためて気づくことも

鈴木祥太今回、塩竈市での展示に向けて、鈴木さんは市の木でもある塩竈桜をモチーフに選び、新作「塩竈桜」を制作した。塩竈桜は、40枚ほどの花びらが集まって1つの花になる八重桜。鈴木さんは薄い金属板を1枚ずつ叩いて花びらの質感を出し、存在感のある作品を完成させた。

「この作品を作るにあたり、めしべが小葉に変化するという塩竈桜の特徴も知ることができました。今回に限らず、作品制作を通して気付くことは多いですね」

鈴木さんの金工作品は、金属に着色せずに伝統的な加工技術によって金属そのものの色味を引き出しており、その組み合わせによって得られる色彩が見どころの一つだ。「塩竈桜」は、銅の茶色と銀の白色を生かした色彩に仕上げている。

故郷の海辺の草花も作品にしていきたい

鈴木祥太「これまで東北地方で作品を展示する機会があまりなかったので、今回、故郷の塩竈で作品を見てもらえてありがたいです。市の有形文化財に指定されている大講堂でのワークショップもいい経験になりました」と話す鈴木さん。今後は地元の草花をモチーフにした作品制作も手がけていきたいと話す。

「今までは作品づくりに際して海を意識することはあまりありませんでした。でも、私が生まれ育った海辺の町にも、力強く生きている草花があります。これからは故郷の海辺の植物にも目を向けたいと思っています」

text:加藤貴伸 photo:大江玲司 取材日:2016年5月4日

プロフィール

鈴木祥太
  • 鈴木 祥太(すずき しょうた)
  • 1987年宮城県塩竈市生まれ。2010年東北芸術工科大学芸術学部美術科工芸コース卒業。身の回りにありふれた植物を彫金技法を用いて実物大制作する。金属の持つ硬さと植物の持つ柔らかな印象を掛け合わせ新しい表情を作る。ギャラリーでのグループ展・個展を中心に、国内外でのアートフェアに参加。【2010】美ナビ展(六本木ヒルズ森タワー52F森アーツセンターギャラリー)【2011】+プリュス-ウルトラ2014(スパイラル/東京青山)【2012】-想いを繋ぐ-(東京都美術館)【2013】夏の思い出 森の夢 不思議ないきものたち(ヤマザキマザック美術館/愛知名古屋市)【2014】JAPANNED!!(Gallery Ten/Edinburgh)【2015】COLLECT(saatchi gallery/London), SOFA(Navy Pier’s Festival Hall/Chicago )

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