折田千秋

2023年夏、塩竈市杉村惇美術館の若手アーティスト支援プログラム「Voyage」で、多数の縦線で構成された平面作品が印象的な個展が開催されている。この個展「コレクティブ・イメージ」の作者である折田千秋さんに話を聞いた。

人々が風景から連想する色を集める

折田千秋この展示を象徴するのは、色とりどりの縦長の線を多数並べたような平面作品だ。

塩竈市民や塩竈にゆかりのある人など70人ほどに塩竈の風景写真(梅の宮からの眺望、浦戸の海、鹽竈神社の表参道)を見せて連想する色を自由に選んでもらい、それらの色と同色の画像を集めて1枚の平面にコラージュしたものだ。

『コレクティブ・イメージ』は『印象の集合知』という意味。塩竈に関係のある人が塩竈の風景に対してもつ印象や、偶然選ばれた画像など、いろいろな要素が集まって、もとの風景が再構成されています」と折田さん。

展示室には協力者が色を選ぶ様子の映像やコラージュのもとになった全画像なども展示されており、折田さんの制作の過程を含めて鑑賞できる構成となっている。

人に生じる「印象」「認知」を作品化

折田千秋折田さんの制作活動のテーマは人に生じる「印象」や「認知」。これまで別の地域でも、前述のような手法で、その地域に対する人々の印象を平面に凝縮して提示する作品を作ってきた。

今回の個展の作品の1つとして折田さんは、浦戸を含む市内各所で採集した海水や土を展示した。この作品「コレクティブ・オブジェクト」は、折田さんにとって新たな試みとなった。

海水や土がただ置いてあっても人は何も感じないけれど、『籬島の海水』と明示されていれば、その海水を見た瞬間に籬島の情景が思い浮かぶかもしれない。そんなふうに鑑賞者に生じる認知の変化を別の形で表現できたら、今後、もっと面白い作品になると思います

人がもつ印象の多様さを感じてほしい

折田千秋今回の個展の制作を通して得た感想を折田さんはこう語る。

最終的な作品を見ると、全体として落ち着いた深みのある色になったと思います。その色味が塩竈の地域性なのだとすると、その背景にあるのが何なのか、興味がわきます

会場に展示されたコラージュ作品は、「落ち着いた深みのある色」という全体的な傾向を示す一方で、地域に対する人々の捉え方が決して一様でないことも明確に表している。

その多様さを感じながら、またご自身が地域に対してイメージする色とも比べながら、じっくり鑑賞してもらえたらうれしいです

Text:加藤貴伸 Photo:大江玲司  取材日:2023年7月15日

プロフィール

折田千秋
  • 折田千秋(おりた ちあき/Chiaki Orita)
  • 現代美術作家。1993年青森県十和田市出身。静岡文化芸術大学卒業、東北大学大学院工学研究科修了。建築学及びデザイン学を専攻し、人ともの、人と空間などの関係性、その結びつきの多様性に注目。普遍的な日常をより詳細に見つめ、生活の一部、またはそれを構成するものを再認識することを目的に作品を制作している。「もの」と「ひと」の関係性を見つめ直し、その距離感や認知の違いを表現している。2020年写真GRANT「PITCH GRANT」、2021年「sanwa company art award」ファイナリスト選出。
  • http://chiakiorita.com/index.html