ATSUSHIさんは、ミュージシャン仲間や親しいアスリートらと一緒に「POWER of LIFE」という、生命の大切さを伝えるプロジェクトを行なっている。今回の震災でも、彼らはいち早く被災地のために何か出来ないかと動き出した。その中でも、人一倍塩竈に熱い気持ちを寄せるATSUSHIさんに、その思いを語っていただいた。
踊ることで自分の気持ちを伝え、見てくれる人を元気づけたい。
あの日も普通に打ち合わせをして、家に帰るまでは、東北がこんなにもひどい状況になっているとは夢にも思わなかったとATSUSHIさんは話す。「夜中に家に帰ってメディアを見たら、とんでもないことになってると初めて知りました」自分に何ができるのか、何をすべきなのかを考えたが、あまりの衝撃にどうしていいのかわからなかったと言う。「自分がやっている「POWER of LIFE」プロジェクトに協力してくれる仲間から電話があり、“ATSUSHI! なんかやんないの?”と言われ、“そりゃそうだ、なんかやんなきゃ!」と、その時にすぐエンジンがかかったんだよね」かねてからの知り合いだった、写真家の平間至氏に「いつか塩竈に連れて行きたい」と言われていたことを思い出し、早速連絡を取り塩竈に向かった。
3月22日、初めて塩竈に入ったATSUSHIさんは、まず、現地の人たちと話しまくった。「とにかくみんなが何を感じて、どう思っているのかが知りたくて。その話を聞いた上で、音楽だったりダンスだったり、自分ができることをやろうと思った。人を見つけると車止めて、降りてって、話しかけちゃう。あとは、片づけをしているところに、パン1個と、水1本ずつを渡しながら、20分~30分くらい話こんだりね。そういうことをしていたら、やっぱり、自分は踊ることで気持ちを伝えられる、踊るべきだなって。」
塩竈には自然や人のパワーに満ち溢れている。
塩竈を初めて訪れた時、御殿岬(七ヶ浜町)というところに連れて行ってもらった。そこ広がる光景は仙台港のコンテナが漂流し、激しく波が打ち寄せていた。「そういう光景を自分は初めて見たんだよね。怒っているような海と怒ったように鳴く鳥、聞こえてくる音が全て怒っているようで。その時、何を思い立ったのか、気付かずに無音のまま1時間くらい踊っていたんだよね。それも初めての経験で。たぶん、地球に対する反省の気持ちと感謝の気持ちが自然に湧き上がってきたのだと思った。」
また、浦戸諸島の存在を知り、津波の勢いを抑えてくれたという話を聞き、その関係性に感動。最近は塩竈を訪れると、できるだけ島に渡るようにしているそうだ。「島の人たちもすごく気さくで温かくて。意外に塩竈の若い人たちは、島に行かないそうですね。それはもったいないですよ」塩竈のアートな側面にも興味を持ち、「POWER of LIFE」の写真展を3月に開催予定とのこと。現地で活躍するアーティストとのコラボレーションは、また新しい塩竈の魅力を生み出すかもしれない。
お互いが楽しい空気感の中で生きていければ最高っス。
3月22日に初めて塩竈に来た時の気持ちと、イオンの駐車場でやった復興ライブの4月17日の気持ちが、自分の中でのスタート地点と語るATSUSHIさん。「中でも特に寒い夜にみんなが肩寄せ合ってやった復興ライブが忘れられない。あの一体感を忘れないためにも、年に1回は続けていきたいですね。自分は塩竈で生まれ育ったわけではないし、そんな偉そうなことは言えないけど、塩竈市役所と塩竈市民の間に入って、ワッショーイ!!!って、声を上げるポジションでありたい。塩竈のみなさんとお互いが楽しい空気感の中で共存していければ、一番だと思っています。
最後に余談ですが、来々軒も寿司屋も、ぜんぶ平間さんのツケにします(笑)それを平間写真館から、市長にツケといてください(笑)。頑張って塩竈に貢献して、そのぐらいのことをやってもらおうかな、なんて目論んでいますのでよろしく!(笑)
Text:落合次郎 Photo:大江玲司 取材日:2011年12月23日
プロフィール
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- ATSUSHI(Dragon Ash)
- 1979年東京都生まれ。17歳の頃にダンスを始める。2001年より、“Dragon Ash”のサポートメンバーとして、全てのPV、全てのLIVE、TOURに出演。2003年、“Dragon Ash”に正式加入。2006年より、ソロダンサーとしても国内外で活動開始。2009年、生命力の素晴らしさ大切さを伝えていくプロジェクト「POWER of LIFE」を発起。一般社団法人POWER of LIFE代表理事。