浦霞醸造

宮城県を代表する地酒として有名な「浦霞」。その醸造元であるのが塩竈市本町にある株式会社佐浦だ。重厚な店構えもさることながら、江戸末期から明治初期に建てられた「土ぞう蔵」を筆頭に、歴史を感じさせる蔵が現在でも使われている。歴史と伝統をかたくなに守り続ける酒蔵を杜氏として守り続けてきた平野重一さんにお話を伺った。

150年の酒造りを支え続けてきた3つの蔵

株式会社佐浦が立地する辺りはもともと海だったそうだ。そこを埋め立て江戸末期から明治初期に建てられた土ぞう蔵の「享保蔵」と大正時代に建てられた石造りの「大正蔵」、平成6年には東松島市に「矢本蔵」が建てられ、あわせて約1万2000石を生産している。「享保蔵」は、杭や釘を一切使わず、しっかりとした敷石を敷いた上に、大きな6本の柱を立てた「浮き船工法」という珍しい造りで、建てられています。現代では出来ない造りだと思います。今回の震災でも持ち堪えましたからね」と平野さんは語る。

「浦霞」の名で塩竈の町にしっかりと根を下ろす

浦霞醸造蔵元である佐浦家の先祖は、はじめ麹製造業を営んでいたが、享保9年(1724年)に酒造株を譲り受け、創業。鹽竈神社の御神酒酒屋として酒を醸し、現在に至っている。「現社長は13代目になります。佐浦家代々の当主は地元への貢献に尽くし、信用を得て来ました。江戸時代に塩竈に大火があった際には持ち山の木を切り住宅用に分け与え、また、飢饉の際には蔵の米を持ち出し人々へ配ったと伝えられています」

『浦霞』という酒銘は大正年間に東北地方で陸軍の大演習があった際、当時摂政宮であった昭和天皇に酒を献上する名誉を授かり、これを機に鎌倉幕府3代将軍源実朝の詠んだ「塩がまの浦の松風霞むなり八十島かけて春やたつらむ(金槐和歌集)」から「浦」と「霞」の二文字を頂き、超特級酒の銘柄名として追加したもので、その後、戦時下の級別制度開始より銘柄名を『浦霞』に統一しました」

全国屈指の受賞歴を背景に、皆に愛される酒造りを

浦霞醸造佐浦は、伊達家の菩提寺である松島の瑞巌寺とも親交が深く、「浦霞禅」のラベルとパッケージの書は百二十八世住職加藤隆芳老師(号 五雲軒)に書いて頂いたそうだ。
「弊社の看板商品の『浦霞禅』は昭和40年代後半、フランスで禅が人気を呼んでいることをヒントに考案されました。結果的に当初の目的であったフランスへの輸出はかないませんでしたが、当時あまり一般には市販されてなかった吟醸酒を「浦霞禅」という酒銘で国内向けに昭和48年に発売。自家培養酵母を用いて低温長期発酵にてじっくりと醸した、ほどよい香りとやわらかな味わいの、淡麗ななかにも旨味が感じられる純米吟醸酒です」

これまで、各種鑑評会等での数々の受賞歴があり、「全国新酒鑑評会」での受賞数は全国でもトップクラス。「佐浦の酒造りは、酒質に応じた自家酵母の選択やきめ細やかな分析と管理を行っています。大吟醸酒は山田錦などの酒造好適米を使用し最高品質を目指し、一般市販酒はバランスのとれた飲み飽きのしない酒造りを目指しています」。

日本酒文化を伝え続けることも大切な役目

浦霞醸造名誉杜氏である平野重一さんは戦後の混乱期に、南部杜氏を代表する名杜氏と謳われた叔父の平野佐五郎杜氏と共に浦霞に蔵入りし、佐五郎杜氏の酒造りを継承し、杜氏、製造部長として製造を統括、現在は名誉杜氏として後進の育成に努めている。」

「酒造りはもちろんのこと、もっとたくさんの日本酒ファンを増やすために、いろいろな啓蒙活動もしているんですよ。特に、一般消費者を対象とした日本酒セミナー『うらかすみ日本酒塾』には毎回たくさんの日本酒ファンが訪れ、実際に蔵を見学していただいたりしながら、日本酒のことを楽しく学んでいただいています」そのほか、『浦霞しぼりたてを楽しむ会』、『浦霞ほろ酔い寄席』、『旬どき・うまいもの自慢会・みやぎ』、地元塩竈市内にあるフランス料理の名店「シェ・ヌー」と共同で地元の旬の素材と浦霞との相性を楽しんで頂く「浦霞を楽しむ夕べ〜フランス料理とのマリアージュ」も年に一度開催している。

浦霞醸造

  • 浦霞醸造浦霞醸造外観
  • 浦霞醸造浦霞醸造店内
  • 浦霞醸造きめ細やかな分析と管理が良酒を創りだす
  • 浦霞醸造
    『特別純米酒 生一本浦霞』宮城県産ササニシキ100%使用。米の持つ豊かな味わいが楽しめる
  • 浦霞醸造
    『からくち浦霞』
    ほのかな香りとすっきりとした味わいの辛口の本醸造酒。お燗にも最適
  • 浦霞醸造
    昭和40年代後半、フランスで禅が人気を呼んでいることをヒントに考案された

SHOP INFO.

  • 店名:浦霞醸造元 株式会社佐浦
  • 住所:塩竈市本町2-19
  • 電話:022-362-4165
  • ファックス:022-362-7895
  • URL:http://www.urakasumi.com/
  • 営業時間:10:00~17:00
  • 定休日:日曜、年末年始、その他臨時休業日有り

Text:落合次郎 Photo:大江玲司 取材日:2012年1月12日