荻原醸造

店先の大きな仕込み樽が目印の荻原醸造。建物は江戸の後期に建てられたもので160年は経っているという。鹽竈神社の門前町である西町。以前は数多く存在した料理屋のひとつだったが、その建物を初代が買取り味噌・醤油店を創業したのが明治21年。今回お話を伺った荻原勝さんで5代目を数える

古くからの伝統の技を前向きに活かし、新製品にも格段の思いを込める。

荻原醸造荻原醸造は今年で創業124年目。建物自体は江戸の後期に建てられたもので、実に160年ほど経っている。「このあたりは神社の門前町で料理屋や旅館、遊郭がたくさん軒を連ねていたそうです。当店が扱っているのは、味噌と醤油。味噌の方は「仙台味噌」で、これは宮城県の米麹の赤味噌のことを総称していうのですが、基本的には“しょっぱい”“辛口”が昔ながらの味なんです」

昔からの味を残したものもあるが、最近のお客さんの好みに合わせた、甘口の味噌もあるそうだ。「伝統的な仙台味噌を甘口にして、香り豊かな味わい深いものに仕上げた『特選 花こうじ味噌』が現在の看板味噌になっています。麹って、米粒ですから、米粒がぽんぽんぽん、と、茶色い味噌のなかに、白く入るわけですよね、それが、お花が咲いたように見えるわけです。それで、花こうじと名付けました。味噌汁が嫌いなお子さんでも、おかわりしてくれたという話もお聞きして、うれしく思ったりします。若い人にもお薦めですね」。

荻原醸造いち押しの「きあげ」

荻原醸造 きあげ醤油お醤油は、『きあげ醤油』。完全無添加で、まったく薄まっていない、非常にめずらしい、貴重なお醤油だ。つまり、もろみをしぼったままの原液でこれを“きあげ”という。「醤油では、これがうちの一押しです。使い方としては、料理に使うというよりは、お刺身醤油とか、おひたしとか、冷や奴、たまごかけご飯なんかによく合うんですね。料理で使うと、そこに調味料が入って、しぼりたてのこの味の意味がなくなってしまう。なるべくそのまま口に入るもので使っていただきたいですね」

そのほか、きあげがベースのだし醤油『つゆの里』は簡単に旨い味が出せると人気が高い。「”おさしみ関係はきあげ、お料理にはつゆの里”というお宅が、うちのお客さんでは一番多い。なかなかお料理しなくなってきている傾向があるし、出来合いで済ませよう、っていうことも多いですよね。その中で、出来合いのお惣菜でも、ちょっとひと手間かけて、というときにお手伝いできるのが、うちのお醤油たちなんですよ。」

玉こんにひなめぐり。地域やお客さんとのふれあいも大切に。

荻原醸造また、荻原醸造で人気なのが自慢の醤油がしみこんだ『玉こん』。もともとは、初売りのときに始めたものだが、あまりの人気ぶりに定番のようになってしまったという。「最初は玉こんで醤油の味見をしてもらえたらなと思ったんです。そうしたら、味噌・醤油よりも、玉こんの方が有名になってしまったんです(笑)

始めてから20年くらいになるんですが“いつもここで玉こん食べてから、初詣行くんですよ”なんて言われたりすると、辞めるに辞められないんです」また、春には門前町界隈の店舗が協力して、それぞれのお宅のお雛様を飾る『ひなめぐり』にも参加している。「当店ではお店と奥の座敷に飾ります。奥の座敷には大きい160年の神棚があるので、それも一緒にご覧いただいています。つるし雛なんかも飾って、古いものから、新しいもの、全部出して飾りますね。古いお雛様は、なかなか出す機会がなかったのですが、何十年かぶりに開いたから、それはそれでよかった。それに、家族だけでなくて、たくさんの人が見てくれるから、すごくいいなぁと思いますね。お雛たちも喜んでますよ、きっと。」

商品のことを理解して買っていただくのも商売としては大事なことなのだが、観光案内や『ひなめぐり』などのイベントにもたくさん関わっていきたいな、と荻原さんは語る。「うちの店自体が卸売専門のように思う人が多いみたいで、ケースでしか買えない、と思っているお客さんもいたりする。だから、知っていただく意味でも、イベントは大切です。ただお客さんを待ってるだけじゃなくて、自分から考え、そして動いて、アピールしていかなければ、と思っています。

荻原醸造

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    荻原醸造外観
  • 荻原醸造
    160年間、門前町を見つめる佇まい
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    人気のみそ丸 ドーナッツ
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    みそをつかったキムチ味噌もどうぞ
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    小売もしております
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    つゆの里、仙台みそ

SHOP INFO.

  • 店名:荻原醸造
  • 住所:塩竈市西町3-12
  • 電話:022-362-0453
  • URL:ogiwara-jozo.com
  • 営業時間:9:00~17:00
  • 定休日:不定休

Text:落合次郎 Photo:大江玲司 取材日:2012年1月12日