2024年2月、カナダ出身のアーティスト・SDLAさん(以下「サットさん」)が、塩竈市のギャラリー「ビルドスペース」で個展「スクラップ&スケッチ」を開催する。塩竈市内で働きながら作品づくりに励むサットさんの思いを聞いた。
ALTとして塩竈へ
サットさんはカナダ・モントリオールの出身。幼い頃から日本に興味を持ち、学生時代の2014年には近畿地方の大学への留学も経験した。2016年、塩竈市の小中学校の英語の指導者(ALT)として来日した。
「塩竈は、塩竈市杉村惇美術館やガマロックフェス(※)など豊かな文化のあるおしゃれな街だと思いました。それに、まだ日本語をあまり話せなかった私に親切にしてくれる人がたくさんいて、安心して暮らすことができました」とサットさんは当時を振り返る。
イラスト・デザインの経験を生かす
来日前にはモントリオールでグラフィックデザインやイラストを学んだこともあるサットさん。塩竈でのさまざまな活動にその経験を生かしている。
小中学校では授業の教材や校内の英語の掲示物を手描きする。また2021年には塩竈市杉村惇美術館のプロジェクトとして、勝画楼の歴史や関係者の談話などをイラストと英語、日本語でまとめた紙媒体『space:reimagined. 新たに想像される空間』を仲間とともに制作した。
「学校の教材や掲示物も勝画楼の紹介も、楽しいものにしたいと思いながら作ってきました。アート作品を作っているという意識はありませんでした」とサットさん。その後、友人でもあるビルドスペースの高田彩さんとの対話を経て考えが変わったと話す。
「私が作ってきたものを作品として展示することを高田さんが強く勧めてくれました。『私はアーティストではないのに?』と戸惑いはありましたが、高田さんの『あなたにとってアートは人生の一部なのでは』との言葉で、やってみようと思えました」
そして2022年夏、サットさんはビルドスペースで初の個展「Field Notes by SDLA」を開催した。
「作品」を描くようになった
2022年の個展以降、手描きの教材など自らの制作物をアートとして認識するようになったサットさん。2023年2月には塩竈市内のシェアアトリエ「本多工房」の1室で本格的に作品制作を始めた。アトリエ内の壁には学校での印象的な場面を切り取ったスケッチなどが所狭しと貼られている。
「これまで、塩竈で出会った人たちに助けられて暮らしてきました。小中学校では子どもたちとのたくさんの思い出があります。今は、そのような経験や思い出を作品として残したいと思っています」
2024年2月、サットさんはビルドスペースで2回目の個展「スクラップ&スケッチ」を開催予定だ。
<脚注>
※写真家・平間至(塩竈市出身)とダンサー・ATSUSHIの主催で2012年から2020年まで毎年秋に開催されたイベント「SHIOGAMA ROCK FESTIVAL」。
text&photo 加藤貴伸 取材日:2023年11月23日
プロフィール
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- Sat DE LOS ANGELS(SDLA/サット)
- アーティスト。
1987年カナダ・モントリオール生まれ。
2016年からALT(外国語指導助手)として市内小中学校に勤務。鉛筆、ペン、水彩やデジタル技術などを組み合わせた作品制作を続ける。